「ここまで我慢したのに、今さら売れない」「せっかく買ったのにもったいない」
この「もったいない」という感情が、投資で損失を拡大させる原因になることがあります。
この記事では、サンクコストの罠と、その対策を解説します。
サンクコストとは
サンクコスト(Sunk Cost)とは、すでに支払って取り戻せない費用のことです。日本語では「埋没費用」とも呼ばれます。
日常生活での例
- 映画がつまらないけど、チケット代がもったいないので最後まで観る
- 食べ放題で元を取ろうとして食べすぎる
- 読みかけの本がつまらないけど、途中でやめられない
すでに払ったお金や時間は戻ってきません。それなのに、「もったいない」と感じて非合理的な行動をしてしまうのがサンクコストの罠です。
でも、もったいないと感じるのは自然では?
感情としては自然です。しかし、過去の費用は将来の判断に影響させるべきではありません。映画がつまらないなら、途中で出て有意義な時間を過ごした方が合理的です。
投資におけるサンクコストの罠
パターン1:損切りできない
最も多いパターンが、「ここまで持ったのに」で損切りできないケースです。
例:
- 100万円で買った株が50万円に下落
- 「50万円も損するのはもったいない」
- 「ここまで我慢したのに今さら売れない」
- 結果、30万円まで下落して損失拡大
すでに失った50万円は取り戻せません。重要なのは「今後どうなるか」です。
パターン2:塩漬け株を持ち続ける
「いつか戻るはず」と塩漬け株を持ち続けるパターンです。
問題点:
- 資金が拘束される
- 他の投資機会を逃す
- 精神的なストレスになる
「持ち続けるコスト」も考慮すべきです。
パターン3:ナンピン買いの悪循環
「買値を下げるため」にナンピン買いを繰り返すパターンです。
例:
- 1,000円で買った株が800円に下落
- 「平均取得単価を下げよう」と追加購入
- さらに600円に下落、また追加購入
- 結果、大きな含み損を抱える
ナンピン自体は悪くありませんが、「買値を下げたい」という動機が問題です。
ナンピン買いは「今後上がると確信できる場合」にのみ行うべきです。単に「買値を下げたい」という理由でのナンピンは危険です。
パターン4:時間のサンクコスト
お金だけでなく、「調べた時間」「分析した労力」もサンクコストになります。
例:
- 何時間もかけて分析した銘柄
- 「せっかく調べたのだから買わないと」
- 冷静に見ると魅力的でなくても購入
時間をかけたことは、その銘柄が良いことの証明にはなりません。
サンクコストの罠に陥る心理
損失回避バイアス
人は利益よりも損失を過大に評価します。
- 100万円得る喜び < 100万円失う悲しみ
この傾向が、損失を確定させることへの強い抵抗を生みます。
自己正当化
「自分の判断は正しかった」と思いたい心理が働きます。
- 売却 = 自分の間違いを認めること
- 持ち続ける = まだ間違っていないと思える
コンコルド効果
イギリスとフランスが開発した超音速旅客機「コンコルド」が由来です。
開発途中で採算が取れないと分かっても、「ここまで投資したのに」と開発を続け、最終的に大きな損失を出しました。
サンクコストの罠への対策
対策1:「今から買うか?」で判断
過去の投資額を忘れ、「今この価格で買うか?」で判断します。
実践方法:
- 持っている銘柄を一度「売却した」と仮定する
- 今の価格で「買い直すか?」と自問する
- 買わないなら、売却を検討すべき
でも、すでに持っている銘柄を客観的に見るのは難しいです…
確かに難しいです。そこで、「友人に相談されたらどうアドバイスするか?」と考えてみてください。自分事だと感情的になりますが、他人事なら冷静に判断できることが多いです。
対策2:売買ルールを事前に決める
感情に左右されないよう、ルールを事前に決めておくことが効果的です。
ルールの例:
- 「-15%で損切り」
- 「業績が2期連続で悪化したら売却」
- 「目標株価に達したら売却」
ルールを決めておけば、サンクコストに囚われにくくなります。
対策3:機会費用を考える
塩漬け株を持ち続けることの「機会費用」を考えましょう。
機会費用とは:
- その資金を他に投資していれば得られたリターン
- 例:塩漬けの50万円を年利5%で運用 → 年間2.5万円の機会損失
「持ち続けるコスト」を意識すると、損切りのハードルが下がります。
対策4:インデックス投資に切り替える
個別株でサンクコストに悩むなら、インデックス投資に切り替えるのも一つの方法です。
- 個別銘柄への執着がなくなる
- 長期で積立するだけでOK
- 心理的な負担が軽減
対策5:定期的にポートフォリオを見直す
3ヶ月や半年ごとに、保有銘柄を見直す習慣をつけましょう。
見直しの視点:
- 「今でも買いたいと思うか?」
- 「当初の投資理由は今も有効か?」
- 「他にもっと良い投資先はないか?」
正しい判断の考え方
ゼロベース思考
すべてをゼロから考え直す思考法です。
過去を忘れて考える:
- 「今、手元に現金があったら、この株を買うか?」
- 「今から投資を始めるなら、どうするか?」
将来キャッシュフローで判断
投資の価値は、将来得られるリターンで決まります。
- 過去にいくら払ったかは関係ない
- 今後いくらのリターンが期待できるかで判断
損失を学びに変える
損切りした経験を「授業料」と考えましょう。
- なぜ失敗したのか分析する
- 次の投資に活かす
- 同じ失敗を繰り返さない
まとめ
サンクコストの罠について解説しました。
ポイント:
- サンクコストは「すでに支払って取り戻せない費用」
- 「もったいない」で非合理的な判断をしてしまう
- 投資では損切りできない、塩漬け株の原因に
- 対策は「今から買うか?」で判断すること
- 機会費用も考慮する
- 売買ルールを事前に決めておく
過去は変えられません。将来のために、合理的な判断をしましょう。
よくある質問
結果論です。売却時点では「今後どうなるか分からない」状況で判断しています。戻ることもあれば、さらに下がることもあります。ルールに従った判断なら、後悔する必要はありません。
「今でもこの株を買いたいか?」と自問してください。買いたくないなら、損切りして他の投資に回す方が合理的です。また、確定申告で損益通算できるタイミングも検討しましょう。
「今後上がる」と確信できるなら、ナンピンは有効な戦略です。ただし、「買値を下げたい」という理由だけでのナンピンは危険です。根拠を持って判断しましょう。
誰でも囚われます。大切なのは「自分はバイアスの影響を受けている」と認識すること。事前にルールを決めておき、機械的に実行する仕組みを作りましょう。