2026年1月20日、日本の債券市場に激震が走りました。
40年物国債の利回りが史上初めて4%を突破し、4.24%に到達。2007年に40年債が導入されて以来、一度も到達したことのない水準です。30年債も1日で25ベーシスポイント(bp)上昇し、1999年以来最大の変動幅を記録しました。
Bloomberg、Fortuneなど海外メディアも一斉に報道し、「日本発の金利ショック」は世界の金融市場に波紋を広げています。この記事では、何が起きたのか、なぜ起きたのか、そして個人投資家は何をすべきかを整理します。
何が起きたのか──「暴落」の全容
40年債利回り4.24%の衝撃
国債の利回りが上がるとは、どういうことですか?
国債の利回りが上がるということは、国債の価格が下落しているということです。投資家が日本国債を売っている、つまり「日本の借金」への信頼が揺らいでいるサインといえます。
1月20日の主な動き:
- 40年債利回り:4.24%(2007年の導入以来初の4%超え)
- 30年債利回り:1日で+25bp(1999年以来最大の変動幅)
- わずか280万ドル(約4億円)の売りが利回り曲線全体に4,100億ドル(約6兆円)規模の影響を波及
超長期国債(30年、40年)は市場参加者が限られており、流動性が低いのが特徴です。そのため、わずかな売り注文でも価格が大きく動きます。特に国内の買い手が減少している現在、「板が薄い」状態で暴落が起きました。
背景にある構造的要因
| 要因 | 内容 |
|---|---|
| 消費税減税論 | 高市首相が食料品消費税2年間停止を公約 |
| 財政悪化懸念 | GDP比240%の債務残高、先進国最悪 |
| 衆院解散・総選挙 | 2月8日投開票、バラマキ合戦への懸念 |
| 日銀の利上げ | 政策金利0.75%、金融正常化の進行 |
| 国内買い手の不足 | 超長期債の海外投資家比率が50%超に |
海外メディアの警告
Bloombergの報道
Bloombergは1月25日付の特集記事で、日本国債市場の暴落が「世界の金利に対する警鐘」であると報じました。7兆ドル規模の日本国債市場が揺らげば、米国債を含む世界の債券市場に波及するリスクがあると指摘しています。
Fortune誌「相互確証破壊」
Fortune誌は2月1日付で、7.3兆ドルの日本国債市場に「相互確証破壊(mutually assured destruction)」の構造があると分析。銀行、年金、保険会社、郵便貯金などが国債を大量に保有しているため、売れば自分も損をする──この「共倒れ」の恐怖が、これまで暴落を防いできたと解説しています。
海外投資家の保有比率が上昇し、「売っても自分は困らない」プレーヤーが増えています。国内投資家による安定保有の構造が崩れつつあることが、今回の暴落の根底にあります。
生命保険会社への影響──含み損9兆円超
大手4社の含み損
金利上昇は、大量の国債を保有する生命保険会社を直撃しています。
| 生命保険会社 | 国内債含み損(2025年9月末) | 前年比 |
|---|---|---|
| 日本生命 | 4.164兆円(過去最大) | 大幅増 |
| 明治安田生命 | 1.386兆円 | 約8.6倍 |
| 住友生命 | 約1.5兆円 | 大幅増 |
| 第一生命 | 約2兆円 | 大幅増 |
| 合計 | 約9兆円超 | 前年比約4倍 |
含み損が9兆円というのは、生命保険が潰れるということですか?
すぐに経営破綻するわけではありません。「含み損」は保有国債を売らない限り実現しない損失です。ただし、金融庁が緊急ヒアリングを実施するなど、当局も事態を注視しています。
金融庁の対応
金融庁は1月23日、生命保険会社に対する含み損の緊急ヒアリングを実施しました。各社のリスク管理体制、ALM(資産負債管理)の状況について確認が行われています。
生命保険会社は、保険契約者への支払い義務(負債)に対して、国債で運用する資産を保有しています。金利上昇で新規投資の利回りは改善しますが、既存の低利回り国債ポートフォリオの含み損が膨張する「ミスマッチリスク」に直面しています。
住宅ローンへの影響──フラット35が制度開始以来最高に
フラット35の金利推移
| 時期 | フラット35金利(21年以上・9割以下) | 前月比 |
|---|---|---|
| 2025年10月 | 1.82% | - |
| 2025年12月 | 1.96% | +0.06% |
| 2026年1月 | 2.08% | +0.12% |
| 2026年2月 | 2.26% | +0.18% |
2026年2月のフラット35の最低金利は2.26%で、2017年10月の現行制度開始以来の最高水準を更新しました。前月比+0.18%は4カ月連続の上昇です。
変動金利への影響
変動金利は現時点では大きな変動はなく、新規の優遇金利は0.6〜0.7%台が中心です。しかし、日銀の政策金利が0.75%まで上昇しており、2026年4月以降の変動金利引き上げが見込まれています。
日銀がさらに利上げを続ける場合、変動金利は段階的に上昇します。現在の返済額に余裕がない方は、固定金利への借り換えを早めに検討することをおすすめします。金利が上がってからでは、借り換え先の固定金利もすでに高くなっている可能性があります。
超長期国債の「買い手不足」問題
海外投資家が50%超
日本経済新聞の報道によると、超長期国債(30年、40年)の買い手として、海外投資家の比率が50%を超えたとされています。
かつて超長期国債の主な買い手は国内の生命保険会社や年金基金でしたが、含み損の拡大を受けて購入を抑制。その穴を埋める形で海外投資家が参入していますが、彼らは「利回り」で投資判断を行うため、財政リスクが高まれば容赦なく売却します。
国内の安定保有者が減り、海外投資家が増えるということは、市場のボラティリティが高まることを意味します。日本国債市場は構造的に不安定になりつつあるといえるでしょう。
個人投資家がとるべき行動
1. 個人向け国債(変動10年)が魅力的に
金利上昇局面では、個人向け国債の変動10年タイプが有利です。
- 2026年1月の適用利率:1.39%
- 半年ごとに金利が見直されるため、利上げに追随
- 元本保証(1年経過後はいつでも中途換金可能)
- 最低金利0.05%が保証
個人向け国債は元本保証のため、金利上昇で価格が下落するリスクがありません。一方、市場で流通する国債(ETFや投資信託経由)は価格変動リスクがあります。安全資産として保有するなら個人向け国債がおすすめです。
2. 固定金利ローンへの借り換え検討
変動金利で住宅ローンを借りている方は、固定金利への借り換えを検討するタイミングです。フラット35の金利は上昇傾向にありますが、変動金利が今後さらに上がれば、結果的に「早めに固定した方が得だった」となる可能性があります。
3. ポートフォリオの分散を再確認
アセットアロケーションの観点から、以下を確認しましょう。
- 債券比率:金利上昇局面では長期債より短期債が有利
- 円資産と外貨資産のバランス:日本国債リスクへのヘッジとして外貨資産も重要
- 株式のセクター配分:金融セクター(銀行・保険の一部)は金利上昇の恩恵あり
まとめ
日本国債の「暴落」が示すポイント:
- 40年債利回りが史上初の4%超え(4.24%)を記録
- 30年債は1日で+25bp、1999年以来最大の変動
- 生保4社の含み損は約9兆円、前年比4倍に膨張
- フラット35は2.26%(現行制度で最高)、変動金利も上昇見込み
- 超長期債の海外投資家比率が50%超、安定保有構造の崩壊
- 個人投資家は変動10年国債の活用とポートフォリオ分散で備えるべき
日本の「金利のない世界」は完全に終わりました。金利上昇は預貯金の利回り改善というメリットがある一方、住宅ローン負担の増加や債券価格の下落というデメリットもあります。冷静に状況を把握し、自分の資産を守る行動をとりましょう。
よくある質問
銀行預金は預金保険制度により1金融機関あたり元本1,000万円とその利息まで保護されています。国債の暴落が直接預金に影響することはありません。むしろ金利上昇で預金金利は改善傾向にあります。
すぐに保険金の支払いに影響することはありません。ただし、保険会社の経営体力が低下すれば、将来の配当金の減額や新商品の利回り低下につながる可能性はあります。金融庁も監視を強化しています。
金利上昇局面では固定金利の安心感が高まります。ただし、変動金利はまだ0.6〜0.7%台と低水準です。返済額に十分な余裕がある方は変動、余裕がない方は固定が安全です。ミックスローン(固定+変動)も選択肢です。
金利上昇局面では変動10年タイプが有利です。2026年1月時点で適用利率1.39%と、ここ数年では高水準です。元本保証かつ金利上昇に追随するため、安全資産の置き場として魅力的といえます。
財政健全化の道筋が見えない限り、超長期債の利回りは高止まりする可能性があります。一方、日銀の金融政策や選挙結果によっては一時的に落ち着く場面もあるでしょう。構造的な問題(GDP比240%の債務、高齢化)は短期間では解消しません。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。