「相続対策なんて、まだ先の話でしょ?」
——そう思っている方も多いでしょう。しかし、資産が1,000万円を超えてきたら、少しずつ相続について考え始めるタイミングです。
この記事では、相続税の基礎控除の仕組みと、生前贈与を活用した相続対策を解説します。
相続税の基礎控除を知ろう
基礎控除の計算式
相続税には基礎控除があり、これを超えない限り相続税はかかりません。
基礎控除 = 3,600万円 + 600万円 × 法定相続人の数
| 法定相続人 | 基礎控除額 |
|---|---|
| 1人 | 4,200万円 |
| 2人 | 4,800万円 |
| 3人 | 5,400万円 |
| 4人 | 6,000万円 |
法定相続人って何ですか?
民法で定められた相続する権利がある人のことです。配偶者は常に相続人になり、それに加えて子どもがいれば子ども、子どもがいなければ親、親もいなければ兄弟姉妹という順番で決まります。
意外と身近な相続税
2015年の税制改正で基礎控除額が引き下げられ、相続税が身近な税金になりました。
相続税がかかる可能性がある資産:
- 不動産(自宅含む)
- 預貯金
- 株式・投資信託
- 生命保険(非課税枠超過分)
- その他の財産
都市部に自宅を所有している場合、土地だけで基礎控除を超えるケースも珍しくありません。自宅の評価額は一度確認しておくことをおすすめします。
生前贈与の基本
暦年贈与(年110万円の非課税枠)
毎年110万円までは贈与税がかかりません。これを暦年贈与といいます。
毎年110万円ずつ贈与すれば、相続税を減らせるんですね。
そうです。10年続ければ1,100万円を非課税で移転できます。時間をかけることで、大きな効果が得られるのが生前贈与の特徴です。
暦年贈与の注意点
ただし、2024年からの税制改正で注意点があります。
相続前7年以内の贈与は相続財産に加算:
- 以前は3年以内だったが、7年に延長
- 相続直前の駆け込み贈与が難しくなった
- 早めに始めることがより重要に
2024年以降の贈与から段階的に適用されます。完全に7年になるのは2031年以降です。
相続時精算課税制度
もう一つの選択肢として相続時精算課税制度があります。
| 項目 | 暦年贈与 | 相続時精算課税 |
|---|---|---|
| 非課税枠 | 年110万円 | 累計2,500万円 |
| 相続時の扱い | 7年以内は加算 | 全額加算 |
| 対象 | 誰でも | 60歳以上の親から18歳以上の子へ |
2024年の改正ポイント
2024年から、相続時精算課税制度に年110万円の基礎控除が追加されました。
どういうことですか?
相続時精算課税を選んでも、毎年110万円までは相続財産に加算されなくなりました。これは大きな改正です。以前は、一度選択すると暦年贈与に戻れず、少額の贈与でも全額が相続財産に加算されていました。
具体的な相続対策
1. 現状把握から始める
まずは、現在の資産と将来の相続税を把握しましょう。
チェックリスト:
- 不動産の評価額(路線価で概算)
- 預貯金・有価証券の残高
- 生命保険の死亡保険金
- 法定相続人の人数
- 基礎控除額の計算
2. 生前贈与を計画的に
基礎控除を超えそうな場合は、生前贈与を検討しましょう。
贈与先の例:
- 子どもへの贈与
- 孫への贈与(教育資金贈与の非課税制度)
- 配偶者への自宅贈与(おしどり贈与)
3. 非課税制度の活用
相続・贈与には様々な非課税制度があります。
| 制度 | 非課税限度額 | 条件 |
|---|---|---|
| 暦年贈与 | 年110万円 | なし |
| 住宅取得資金贈与 | 最大1,000万円 | 住宅購入目的 |
| 教育資金一括贈与 | 1,500万円 | 30歳未満の子・孫へ |
| 結婚・子育て資金贈与 | 1,000万円 | 18〜49歳の子・孫へ |
| 生命保険の非課税枠 | 500万円×法定相続人数 | — |
4. 専門家への相談
相続対策は複雑で、個別の事情によって最適な方法が異なります。資産が大きい場合は、税理士や相続の専門家に相談することをおすすめします。
「まだ早い」と思っているうちに相談するのがベストです。相続発生後では使えない対策も多いため、余裕を持った準備が大切です。
投資と相続の関係
投資資産も相続財産になる
NISAや特定口座の株式・投資信託も、相続財産として評価されます。
NISAも相続税の対象になるんですか?
はい。NISAは「運用中の利益が非課税」というだけで、相続時には評価額が相続財産に含まれます。非課税枠は相続人に引き継げないので、この点は注意が必要です。
相続を見据えた資産配分
相続対策を考える場合、資産の「流動性」も重要です。
- 流動性が高い資産:預貯金、上場株式、投資信託
- 流動性が低い資産:不動産、非上場株式
相続税の納税資金を確保するために、一定の流動性を持った資産を残しておくことも大切です。
まとめ
資産1,000万円を超えたら考える相続対策についてまとめます。
相続税の基礎控除:
- 3,600万円 + 600万円 × 法定相続人の数
- 相続人2人なら4,800万円まで非課税
- 都市部の不動産があると超えやすい
生前贈与のポイント:
- 暦年贈与:年110万円まで非課税
- 相続時精算課税:2,500万円まで非課税
- 2024年から精算課税に110万円の基礎控除追加
相続対策の基本:
- 早めに始めるほど効果的
- 非課税制度を活用する
- 複雑な場合は専門家に相談
「まだ先」と思わず、少しずつ準備を始めましょう。
※本記事は情報提供を目的としており、税務アドバイスではありません。
個別の相続対策は税理士等の専門家にご相談ください。
よくある質問
基礎控除(3,600万円+600万円×法定相続人の数)を超えた場合に相続税がかかります。相続人が2人なら4,800万円を超えた部分に課税されます。
暦年贈与なら年110万円まで非課税です。これを超えると贈与税がかかります。相続時精算課税を選択すれば、累計2,500万円まで非課税で贈与できます。
早ければ早いほど効果的です。生前贈与は時間をかけるほど非課税枠を多く使えます。また、2024年の改正で相続前7年以内の贈与が加算対象になったため、より早期の開始が重要です。
はい、対象になります。NISAは運用中の利益が非課税になるだけで、相続時には評価額が相続財産に含まれます。非課税枠は相続人に引き継げません。