「親の資産管理、このままで大丈夫?」
——親が高齢になると、認知症への備えが気になり始めます。認知症になると、預金の引き出しや不動産の売却ができなくなることも。
この記事では、高齢親の資産管理に使える成年後見制度と家族信託の違い、どちらを選ぶべきかを解説します。
認知症になるとどうなる?
資産が「凍結」される
認知症になり判断能力が低下すると、以下のことが難しくなります。
できなくなる可能性があること:
- 銀行預金の引き出し(窓口で本人確認できない)
- 定期預金の解約
- 不動産の売却・賃貸契約
- 株式・投資信託の売却
- 生命保険の解約
家族でも引き出せないんですか?
基本的にはできません。たとえ子どもでも、本人の意思確認ができなければ、金融機関は対応してくれないことが多いです。介護費用が必要なのに、親のお金が使えないという事態になりかねません。
増え続ける認知症患者
厚生労働省の推計によると、2025年には高齢者の約5人に1人が認知症になるとされています。他人事ではありません。
認知症になってからでは、対策の選択肢が限られます。親が元気なうちに、家族で話し合っておくことが重要です。
成年後見制度とは
裁判所が後見人を選任
成年後見制度は、判断能力が低下した人の財産を保護する制度です。裁判所に申立てを行い、後見人を選任してもらいます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申立先 | 家庭裁判所 |
| 後見人 | 裁判所が選任(家族とは限らない) |
| 費用 | 申立費用+後見人報酬(月2〜5万円程度) |
| 開始時期 | 判断能力が低下した後 |
法定後見と任意後見
成年後見制度には2種類あります。
法定後見:
- 判断能力が低下した後に申立て
- 裁判所が後見人を選任
- 家族が後見人になれないことも
任意後見:
- 判断能力があるうちに契約
- 自分で後見人を選べる
- 判断能力低下後に効力発生
任意後見の方が良さそうですね。
そうです。任意後見なら、信頼できる人を自分で選べます。ただし、判断能力があるうちに契約が必要なので、早めの準備が大切です。
成年後見制度のメリット・デメリット
- 法的な権限が明確
- 本人の財産を守れる
- 詐欺被害から保護できる
- 家族が後見人になれないことがある
- 後見人への報酬が継続的にかかる
- 財産の積極的な運用は難しい
- 一度始めると原則やめられない
家族信託とは
家族に財産管理を委託
家族信託は、財産の管理・運用を信頼できる家族に任せる仕組みです。
| 用語 | 説明 |
|---|---|
| 委託者 | 財産を託す人(親) |
| 受託者 | 財産を管理する人(子など) |
| 受益者 | 利益を受ける人(通常は親自身) |
成年後見とどう違うんですか?
家族信託は元気なうちに契約し、すぐに効力が発生します。認知症になる前から財産管理を始められるので、スムーズに移行できます。また、裁判所の関与がないので、柔軟な運用が可能です。
家族信託の活用例
例:親の自宅を信託
- 親(委託者)が子(受託者)に自宅を信託
- 親は引き続き自宅に住み続ける(受益者)
- 親が施設に入所したら、子が自宅を売却できる
- 売却代金は親の介護費用に充てる
成年後見では、自宅の売却に裁判所の許可が必要ですが、家族信託ならスムーズに売却できます。
家族信託のメリット・デメリット
- 家族が財産を管理できる
- 裁判所の関与がない
- 柔軟な運用が可能
- 認知症になる前から始められる
- 初期費用が高い(30〜100万円程度)
- 信頼できる家族が必要
- 契約内容が複雑
- 身上監護(介護契約など)はできない
どちらを選ぶべきか
状況別の選び方
| 状況 | おすすめの制度 |
|---|---|
| 親が元気で、家族に信頼できる人がいる | 家族信託 |
| 親が元気で、将来の後見人を決めたい | 任意後見 |
| すでに判断能力が低下している | 法定後見 |
| 家族間でトラブルの可能性がある | 成年後見(専門家を後見人に) |
併用も検討
家族信託と任意後見は併用も可能です。
- 家族信託:財産管理
- 任意後見:身上監護(介護契約、施設入所など)
両方を組み合わせることで、より包括的な備えができます。
どこに相談すればいいですか?
弁護士、司法書士、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。家族信託は契約内容が複雑なので、専門家のサポートがあると安心です。
今からできること
1. 親と話し合う
まずは、親が元気なうちに話し合いの機会を作りましょう。
話し合いのポイント:
- 将来の介護についての希望
- 財産の状況(預貯金、不動産など)
- 誰に財産管理を任せたいか
2. 財産の状況を把握する
親の財産がどこにあるか把握しておきましょう。
確認すべきこと:
- 銀行口座(どの銀行に口座があるか)
- 不動産(登記情報)
- 保険(加入している保険)
- 証券口座(株式・投資信託)
3. 専門家に相談する
具体的な対策を検討する場合は、専門家に相談しましょう。
相談先:
- 弁護士・司法書士:法的な手続き
- 税理士:相続税・贈与税
- ファイナンシャルプランナー:全体的な資金計画
「まだ早い」と思っているうちに相談するのがベストです。認知症の症状が出てからでは、対策の選択肢が限られます。
投資資産の管理
NISAや投資信託はどうなる?
親がNISAや投資信託を持っている場合、認知症になると売却が難しくなります。
家族信託の場合:
- 上場株式や投資信託も信託財産に含められる
- 受託者が売却・運用できる
成年後見の場合:
- 投資は原則として行わない(保全が優先)
- 売却して現金化することが多い
親がNISAを続けられなくなったらどうなりますか?
成年後見になった場合、一般的には投資を継続せず、売却して現金化することが多いです。家族信託なら、契約内容によっては運用を継続できる可能性があります。
まとめ
高齢親の資産管理についてまとめます。
認知症になると:
- 預金の引き出し、不動産の売却が難しくなる
- 資産が「凍結」される可能性
対策の選択肢:
- 成年後見制度:裁判所が後見人を選任
- 家族信託:家族に財産管理を委託
- 任意後見:元気なうちに後見人を選ぶ
選び方のポイント:
- 親が元気なら、家族信託か任意後見を検討
- すでに判断能力が低下していたら、法定後見
- 専門家に相談して、最適な方法を選ぶ
親が元気なうちに、話し合いを始めましょう。
※本記事は情報提供を目的としており、法的アドバイスではありません。
個別の対策は弁護士・司法書士等の専門家にご相談ください。
よくある質問
本人の意思確認ができなくなると、引き出しが難しくなることが多いです。家族でも、委任状や代理人カードがなければ対応してもらえないケースがあります。
親が元気で、信頼できる家族がいるなら家族信託がおすすめです。柔軟な運用ができ、裁判所の関与もありません。ただし、初期費用(30〜100万円程度)がかかります。
初期費用として30〜100万円程度が目安です。契約書作成、登記費用、専門家への報酬などが含まれます。財産の規模や内容によって変わります。
「万が一のために」という切り口がおすすめです。「認知症になったら」ではなく、「入院や怪我で動けなくなった時のために」と伝えると、受け入れられやすいことが多いです。