「暗号資産で利益が出たけど、税金が高すぎる」
——これは多くの投資家が抱える悩みです。
現在、暗号資産の利益は「雑所得」として最大55%の税率が適用されます。しかし、申告分離課税20%の導入が検討されており、実現すれば大幅な税負担軽減となります。
この記事では、暗号資産税制改正の動向と今後の見通しを解説します。
現行の暗号資産税制
雑所得として総合課税
暗号資産(仮想通貨)の売却益は、現在「雑所得」に分類され、給与所得などと合算して課税されます。
| 課税所得 | 税率(所得税+住民税) |
|---|---|
| 195万円以下 | 15% |
| 330万円以下 | 20% |
| 695万円以下 | 30% |
| 900万円以下 | 33% |
| 1,800万円以下 | 43% |
| 4,000万円以下 | 50% |
| 4,000万円超 | 55% |
給与所得と合算って、どういうことですか?
例えば年収800万円の人が暗号資産で200万円の利益を得た場合、合計1,000万円に対して税率が適用されます。税率が上の区分に上がってしまうんです。
株式投資との比較
| 項目 | 暗号資産 | 株式・投資信託 |
|---|---|---|
| 課税方式 | 総合課税(雑所得) | 申告分離課税 |
| 税率 | 最大55% | 一律20.315% |
| 損益通算 | 不可 | 可能 |
| 繰越控除 | 不可 | 3年間可能 |
損益通算:複数の投資で出た利益と損失を相殺できる仕組み。株式で100万円の利益、別の株式で50万円の損失なら、課税対象は50万円に。
繰越控除:その年に相殺しきれなかった損失を翌年以降に繰り越せる仕組み。株式は3年間繰り越し可能。
現行制度の問題点
- 少額利益なら税率が低い場合も
- 確定申告で経費を計上可能
- 高所得者ほど税負担が重い
- 損失が出ても他の所得と相殺不可
- 損失の繰越控除ができない
- 年末の含み益調整が困難
検討中の税制改正
申告分離課税20%の導入
業界団体や政治家から、暗号資産にも株式と同じ「申告分離課税20%」を適用すべきという要望が出ています。
改正が実現した場合:
- 税率:一律20.315%
- 損益通算:暗号資産間で可能に
- 繰越控除:3年間可能に
それなら株と同じ扱いになりますね!
はい。例えば1,000万円の利益なら、現行の約450万円から約200万円に税負担が軽減されます。これは大きな違いです。
暗号資産ETFの導入検討
もう一つの大きな動きが、暗号資産ETF(上場投資信託)の導入検討です。
ETFが導入されると:
- 証券口座で暗号資産に投資可能
- NISAで購入できる可能性
- 相続・贈与が簡単に
アメリカでは2024年1月にビットコインETFが承認され、大量の資金が流入しました。日本でもETF導入が実現すれば、機関投資家や個人投資家の参入が加速する可能性があります。
実現時期の見通し
2026年度改正には間に合わず
残念ながら、2026年度の税制改正には暗号資産の分離課税は含まれませんでした。
2026年度改正の主な内容:
- NISAの18歳未満解禁(こどもNISA)
- 対象商品の拡充
- 非課税枠復活ルールの変更
暗号資産税制は「継続検討」の扱いです。
2027年度以降が現実的
いつ実現しそうですか?
業界関係者の見方では、早くても2027年度、現実的には2028年度以降という声が多いです。政府は「投資インフラとしての環境整備」を前提としており、まずETFの法整備が先行する可能性があります。
政府・与党の姿勢
ポジティブな動き:
- 自民党のWeb3プロジェクトチームが分離課税を提言
- 金融庁が暗号資産の法整備を検討
- Japan Fintech Week 2026でAI×ブロックチェーンがテーマに
慎重な姿勢:
- マネーロンダリング対策の強化が前提
- 取引所の監督体制整備
- 国際的な規制動向との整合性
今できること
1. 取引履歴の保管
税制改正を待つ間も、すべての取引履歴を保管しておくことが重要です。
保管すべき情報:
- 購入日時・価格・数量
- 売却日時・価格・数量
- 取引所からの入出金記録
- ウォレット間の移動記録
2. 確定申告の準備
暗号資産で利益が出ている場合は、確定申告が必要です。
給与所得者は雑所得20万円以下なら所得税の確定申告は不要ですが、住民税の申告は必要です。市区町村に住民税の申告をするか、確定申告をしましょう。
3. 長期保有戦略の検討
税制改正が実現すれば、売却益の税負担が軽減されます。
じゃあ、今は売らない方がいいですか?
税制だけで判断するのは危険です。暗号資産は価格変動が大きいので、「税金のために塩漬け」にして大きな含み損を抱えるリスクもあります。投資判断は総合的に行いましょう。
4. 計算ツールの活用
暗号資産の損益計算は複雑です。専用の計算ツールやサービスを活用しましょう。
主な計算サービス:
- Cryptact(クリプタクト)
- Gtax
- クリプトリンク
改正実現後のシミュレーション
利益1,000万円の場合
| 項目 | 現行(総合課税) | 改正後(分離課税) |
|---|---|---|
| 税率 | 約43%(年収次第) | 20.315% |
| 税額 | 約430万円 | 約203万円 |
| 差額 | — | 約227万円の軽減 |
損失が出た場合
| 項目 | 現行 | 改正後(想定) |
|---|---|---|
| 他の暗号資産利益との相殺 | 可能 | 可能 |
| 株式利益との相殺 | 不可 | 可能になる可能性 |
| 翌年への繰越 | 不可 | 3年間可能 |
株式との損益通算が可能になるかは未確定です。「暗号資産間のみ」になる可能性もあります。詳細は改正内容が決定してから確認しましょう。
まとめ
暗号資産税制改正の動向をまとめます。
現行の問題点:
- 雑所得で最大55%課税
- 損益通算・繰越控除ができない
- 株式との格差が大きい
検討中の改正:
- 申告分離課税20%の導入
- 暗号資産ETFの法整備
- 損益通算・繰越控除の導入
実現時期:
- 2026年度改正には含まれず
- 2027年度以降が現実的
今できること:
- 取引履歴の保管
- 確定申告の準備
- 計算ツールの活用
税制改正は確約されたものではありませんが、業界全体で要望が続いており、いずれ実現する可能性は高いと見られています。その日に備えて、記録をしっかり残しておきましょう。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の暗号資産の購入を推奨するものではありません。
暗号資産投資にはリスクが伴います。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。
※税制の詳細は変更される可能性があります。最新情報は国税庁・金融庁の公式発表をご確認ください。
よくある質問
雑所得として総合課税され、所得に応じて15%〜55%(住民税含む)の税率が適用されます。給与所得と合算されるため、高所得者ほど税負担が重くなります。
2026年度税制改正には含まれませんでした。業界関係者の見方では、早くても2027年度、現実的には2028年度以降と見られています。
給与所得者は所得税の確定申告は不要ですが、住民税の申告は必要です。市区町村への住民税申告を忘れないようにしましょう。
ETFが日本で承認され、かつNISA対象商品に指定されれば可能性があります。ただし、実現時期は未定で、数年以上かかる見通しです。